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福岡家庭裁判所 昭和41年(家)1081号 審判 1968年2月22日

申立人 島田秀子(仮名)

相手方 沢本貫一(仮名)

主文

相手方は、申立人に対し、一八万八、三六九円の支払をせよ。

理由

一  申立の趣旨

相手方は、申立人に対し、二六万四、三六九円の支払をせよ。

二  事件の実情

1  申立人と相手方は、昭和二四年三月五日婚姻届出をし、その間に長女初子、長男一郎、次男二郎が出生したが、昭和四〇年九月九日、子供らの親権者を申立人と定め、協議離婚届出をした。

2  申立人は、相手方との婚姻中に、生活費にあてるため、別紙明細書のとおり合計二六万四、三六九円を他から借入れたが、これは相手方が婚姻費用として分担すべきものである。

3  よつて、相手方に対して右金額の支払を求める。

三  裁判所の判断

(一)  調査の結果によると、つぎの事実が認められる。

1  上記事件の実情1の事実。

2  申立人と相手方は、○○市○○団地に子供三人とともに同居していたが、昭和三七年四月からは、申立人は、もつぱら家庭にあつて家事に従事し、相手方は、○○○○電装株式会社を経営して、夫婦生活の経済面一切を負担し、月に合計すると二万円ないし、五万円程度の生活費を申立人に渡していたが、その頃から右会社の経営が思うに任せぬことなどもあつて、その渡す時期も額も一定していなかつたため、申立人は、実家などから一時融通をうけてその場を凌ぐことが多く、昭和四〇年になつてからも、その状況は変らなかつた。

3  別紙明細書(1)の元金六万九、〇〇〇円、(2)の元金五万円は、右のような事情から生活費にあてるため、申立人が他から借用したもので、相手方がこれに見合う金員を申立人に渡さなかつたため、(1)については五、五〇〇円、(2)については二万七、〇〇〇円の利子が加算され、申立人はその全額を実母から一時借用して返済したのであるから、相手方はその全額を婚姻費用として負担すべきものである。

4  同明細書(6)の八、八五九円、(9)の三、七四〇円、(10)の四、七二〇円は、いずれも生活費であり、申立人が実母から一時借用して支払つたものであるから、相手方はその全額を婚姻費用として負担すべきものである。

5  同明細書(5)の一万七、五〇〇円は、相手方が支払うべき自動車税を申立人が生活費のなかから立替えて支払つたものであるから、相手方はそれに見合う額を婚姻費用として負担すべきものである。

6  同明細書(7)の二、〇〇〇円は、相手方が金策すべきものを申立人が生活費のなかから立替えたものであるから、相手方はそれに見合う額を婚姻費用として負担すべきものである。

7  以上のものは、いずれも、申立人と相手方の右夫婦生活の状況からみて、相手方が婚姻費用として負担すべき額として不当とは認められない。

8  同明細書(3)の四万八、〇〇〇円、(4)の一万八、〇〇〇円、(8)の一万円は、いずれも申立人が口ききしたものではあるが、(3)は吉沢、(4)は申立人の弟芳雄、(8)は申立人の実母との間において直接決済すべきものであり、とくに(3)と(8)は、相手方が右会社の運転資金として借用したものであるから、申立人と相手方の婚姻費用といえず、家庭裁判所の審判の対象とはならない。

(二)  以上の事実によつてみると、相手方は、申立人に対し、婚姻費用の分担として合計一八万八、三六九円を支払う義務があり、家庭裁判所は審判時から過去に遡つて婚姻費用の分担に関する処分をすることができるものであるから、本件申立は、右金額の限度においては相当であるが、その余は相当ではない。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 内田八朔)

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